【Blog】あなたにとっての健康とは?~主観的健康感とポジティヴ・ヘルス~(3/3)
ひだまりクリニックの安達です。
前回の続きです。
健康に関して、もう一つご紹介したいのが、ポジティヴ・ヘルスという考え方です。
これは比較的新しくて、2012年に有名な医学雑誌に投稿されました。
ここでは、健康とは定義ではなく、能力だ、としています。健康が能力?どういうこと?と思いますよね。
どのような能力かというと、「社会的・身体的・感情的問題に直面した時に適応し、何とかやりくりする能力」(松田純訳)とされています。つまり、なにか困ったことやつらいことが起きた時に、なんとかそこに向き合う、乗り越えなくてもなんとかやり過ごすことができる、そのような能力を健康と呼ぶのだ、というのです。
これは、かなり斬新な考えではないでしょうか。この考えだと、糖尿病のコントロールが悪くて、医師が治療に苦労しているような患者さんでも、ご本人はその状況を改善は出来なくても、なんとかやり過ごしているとすれば、それがその方の健康という能力と言えるのです。
実際、ポジティヴ・ヘルスは医療者が患者さんを評価するためには用いません。クモの巣と呼ばれる、6つの項目で患者さん自身が、あるいは職場のメンバーや学校の生徒が、自分自身の健康度を評価します。その6つの項目が、また興味深くて、身体的状態、心の状態、日常機能、まではわかりやすいと思いますが、社会とのつながり、暮らしの質もあり、6つめは生きがい、なのです。
自分自身の今を、そのような観点で知ることが、その後の生活について、自分自身と対話する、あるいは医療者と対話をすることに役立つと考えるのです。
つまり、私たちの健康を考えるということは、私たちはどのような存在なのかと考えることになるのですね。人間を、からだや心をもって、この社会で仕事や生きがいをもって生きていく、そのような存在である、全体的な存在であるととらえる観方は、アントロポゾフィー医療と共通しています。実際、この提唱者の医師は、オランダのアントロポゾフィー医療のクリニックで勤務されていました。
からだや心に、多少負荷をかけても、自分の本当にやりたいこと・生きがいを実践できているときは、人は健康でいられるのかもしれません。そのような体験をお持ちの方は、けっこう多いのではないでしょうか。一方で、からだや心の状態をおろそかにしてばかりでは健康ではいられないでしょう。そのバランスも調和する必要がありますね。
長くなりましたが、ご自分の健康に不安があるとき、どの次元の健康に不安があるのか、当院で一緒に考えて行ければと思います。