すみれが丘ひだまりクリニック

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神奈川県横浜市都筑区すみれが丘13-3
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【対談】「緩和ケアで生きる希望を」浦尾弥須子(その1)

「早期からの緩和ケアで生きる希望が与えられるクリニックにしたい」

浦尾弥須子先生  インタビュー 第1回

浦尾弥須子
東京女子医科大学卒業
耳鼻咽喉科全般 特に頭頚部外科(頭頚部癌治療)
心身医学的治療

 

「早期緩和ケアって最近よく聞くけどどんなものなんだろう?」

「ホスピスとはどう違うんだろう?」

「ひだまりクリニックではどんな治療をしてくれるんだろう?」

 

そんな疑問にお応え頂くため、早期緩和ケアを提唱している当院の浦尾弥須子先生と看護師の鶴田史枝さんが質問にやさしく答えてくれました。

第1回は「早期緩和ケアとはどういうものなのか?」について語っていただきます。

 


 

聞き手:はじめに、浦尾先生がお考えになる早期緩和ケアとはどのようなものなのでしょうか?

 

浦尾先生:もともと「緩和ケア」はホスピスと同義語なイメージで、がんなどの末期で辛くなって西洋医学的な治療の対象でなくなったならば、キュア(治療)ではなく、ケアに移行するため緩和ケア病棟やホスピスに移りましょう、という意味合いでした。しかし、今は、「末期になった患者さんをホスピスに入れる」というのではなく、早期から緩和ケアを行うことにより、患者さんの病気の早い段階からQOL(Quality of life)を高めることで少しでも楽に治療を進め、それによってがん治療の成績を上げることに貢献しましょう、というのががん対策の基本になっています。

 

聞き手:ここでいう「早期」というのはどの段階からになるのですか?

 

浦尾先生:早期というのは「がんかもしれない」と言われた時点、またはその診断を待っている最中の不安の大きな時期さえも含めて良いかと思います。ですから、当然「がん」と告知された時点では緩和ケアの対象となるのです。

 

聞き手:緩和ケアを受けることと、実際に手術を受けるのは別の先生になっているのですか?

 

浦尾先生:本当は全部ひとりの主治医でカバーきればいいのですが、なかなかそれは難しいです。きちんと身体の病気に対する主治医を持ち、西洋医学的な治療を受けた上で、緩和ケアも一緒に受けるというのが理想です。病院の中にホスピスを持つ施設の場合には、両方の主治医が一緒に関われることもありますが、実際はホスピスがない病院の方が多く、その場合は一般的ながん治療を最初の病院で行い、古くからの考え方のようにがん治療の適応でなくなった患者さんに対しては治療ではなく、他の施設に移って最後まで緩和ケアだけに専念するという形になってしまうことが多いと思います。

ひだまりクリニックに早期の段階で来て下さると病院でのがん治療と同時並行的に早期からの緩和ケアの導入が可能となります。その際には身体の治療(一般的がん治療)を担当してくださっている主治医の先生とも連絡を取り合えるように色々工夫をしています。

 

聞き手:他の緩和ケアと違うひだまりクリニックならではの特徴はありますか?

 

浦尾先生:ひだまりクリニックでは、アントロポゾフィー医学に根ざす特有な早期からの治療法があるところでしょう。通常の病院における早期緩和ケアはソーシャルワーカーによる社会・経済的なサポート、精神科あるいは心療内科医や臨床心理士による精神的なサポートなどがメインですが、当院ではそれに加えてアントロポゾフィー的な治療を積極的に組み込むことでさらに強力にバックアップができます。

 

内容ですが、対面してお話を伺ったり、カウンセリングをしたり、というのは他でもやっていることかもしれません。でもひだまりクリニックでは、アントロポゾフィー的な治療を行うことによって、これから始まる、あるいは既に行われている抗がん治療(手術、化学療法、放射線療法)の副作用を軽減してたり、QOLを高めたり、生存期間を延長させる効果があると言われています。私自身もドイツ留学中にそれらのことを実際に見て、実感してきました。

結局のところ、副作用が出てしまって治療をストップするとなるとそこがその患者さんの治療の限界になってしまいますが、副作用を抑えて治療を続けることができれば、化学療法や放射線も十分必要なだけ続けることができます。西洋医学的な治療と、アントロポゾフィー的な治療を一緒に行うことで、心の支えだけでなく集学的医療として強力に十分な期間治療を継続することが可能になります。

私が関わっている別の病院でも、早期緩和ケアのサポートチームを作って何年も前からやっているのですが、結局は麻薬の量内容を考えて、どうやって体の痛みに対処するかと言うことに終始することになってしまいます。それは緩和ケア=癌末期の疼痛コントロールといった、過去からの考えが患者さんの側にも、医療者側にもあり、緩和ケアの早期導入を遅らせていると思われます。たまたま、私がこういうことも専門にしているということで、外来に紹介されて来た人の場合は、初期の段階から介入できるのですが、たいがいは「痛みをどうにかしてほしい」という、もうかなり進行していて時間的な余裕の無い状況になってから来られます。そうなる前、つまり症状があるかないかぐらいのうちに始めるのが長期的にみて効果の面でもご本人の楽さの点でも理想的です。

 

 

次回はひだまりクリニックにいらっしゃる緩和ケアの患者さんについてのお話です。

 

【対談】「緩和ケアで生きる希望を」浦尾弥須子(その1)
【対談】「緩和ケアで生きる希望を」浦尾弥須子(その2)
【対談】「緩和ケアで生きる希望を」浦尾弥須子(その3)

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